舞台『THE BITCH』上演記念 出演者インタビュー

芸能の道を志すアナタのためのオーディションサイト

舞台『THE BITCH』上演記念 出演者インタビュー

 8/17~8/21、三越劇場にて、舞台『THE BITCH』が上演されます。これを記念して、オーディションプラスでは、主演ビッチ役の汐美真帆さん、茶坊主役の野口大輔さんにインタビューを行いました。舞台の見どころやオーディションのアドバイスをお聞きしました。

 

汐美真帆(しおみまほ)

 1991年宝塚歌劇団に入団。月組『ベルサイユのばら』で初舞台。14年間男役で活躍。
 退団後2年間ニューヨークにて語学 ダンス 歌 演技 Bartender license Makeup license 日本人初のAtmanandayoga licenseを取得。
 帰国後、日比谷シアタークリエ『RENT』『Radiant Baby』に出演。バラエティ音楽ユニット“L ”で活動中。花柳流日本舞踊名取 花柳栄翔良。Aura-Soma yoga danceの指導。宝塚歌劇団では演技指導を。今年4月からは本格的に女優として活動開始。
 8/17(水)〜8/21(日)三越劇場、Rising Tiptoe#20『THE BITCH』では主演ビッチ役を務める。11/5、6には無音手話芝居『海の子』が控えている。
 Blog http://ameblo.jp/mahoshiomi
 Twitter https://twitter.com/maho_shiomi
 Facebook https://www.facebook.com/汐美真帆-1569308033399089/

 

野口大輔(のぐちだいすけ)

 2007年デビュー。ドラマ・舞台・映画の出演に加えラジオパーソナリティー、演劇集団アトリエッジのメンバーとしても活動中。
 ドラマではテレビ朝日『遺留捜査』TOKYO MX開局初連続ドラマ『えにしの記憶』にレギュラー出演。
 舞台では『銀河英雄伝説』(六本木ブルーシアター/青山劇場)や『流れる雲よ』(新国立劇場/全労済ホール・スペースゼロ 他)
 浅見光彦でお馴染みのミステリー作家・内田康夫の小説『靖国への帰還』(滝野川大ホール)の舞台化ではオーディションで主役に抜擢され主人公・武者滋中尉役にて出演。
 3月『宮本武蔵外伝』佐々木小次郎役、5月『人斬りの恋』斎藤一役と時代劇への出演も増えその活動の幅を広げている。
 8/17(水)〜8/21(日)三越劇場、第3回宇野重吉演劇賞優秀賞受賞作品 Rising Tiptoe#20『THE BITCH』、10月には初主演ミュージカル『The Day~終焉と新生の狭間で〜』が控えている。
 Blog http://ameblo.jp/daisuke-o621/
 Twitter https://twitter.com/noguchi_daisuke

 

舞台『THE BITCH』 あらすじ

挫折癖のある未熟な魂「ビッチ」は人生の試練に直面するとすぐに投げ出してしまっていた。輪廻転生を繰り返すうちに、そんなビッチにも生きることへの意欲が芽生える。
ようやく自らの<道>を進む覚悟を決めたビッチが向かったさきは、極寒のアラスカだったのだが・・・
公演詳細ページ

 

オーディションについて

 

── まずは、芸能界を目指したきっかけを教えてください。

 

汐美真帆 小学校1年生の時、宝塚好きの母に連れられて、初めて宝塚歌劇団の舞台を観ました。「こんな世界があるんだ」って感激して、物心ついた時には宝塚に入るんだって思ってました。それから、日舞、歌、バレエを習い始めましたね。宝塚音楽学校に合格、卒業して、月組『ベルサイユのばら』でデビューです。

汐美真帆

乗馬が趣味の汐美さん。
北海道の浜辺で憧れの”暴れん坊将軍”気分になったそうです。

 

野口大輔 めちゃくちゃ親孝行じゃないですか。娘が自分の好きな宝塚に入ってくれたなんて。

 

汐美真帆 そうかもしれませんね。母が私の一番のファンだと思います。(笑)

 

── 素敵ですね。野口さんは以前のインタビューでスカウトされたのがきっかけとお聞きしました。

 

野口大輔 広告のモデルのバイトに行ったときに、たまたまその会場で声をかけられたんですよ。「興味ありませんか」って。当時はそれほど芸能界に興味はなかったんですけど、「無くはないです」みたいに答えましたね。それから2年芝居のレッスンを積んで、デビューしました。芝居のレッスンでは点数つけられるんですよ。恥ずかしいなと当時は思ってましたね。デビューしてから、いろいろオーディションを受けるようになりました。

野口大輔

インタビューには2度目の登場となる野口さん。
最近では育てている豆苗の成長が楽しみとのこと。

 

── 特に思い出に残っているオーディションってありますか?

 

野口大輔 舞台版「靖国への帰還」のオーディションが思い出深いです。原作は内田康夫さんの小説なのですが、好きな本が舞台化すると知ったとき、絶対に携わりたいと思いました。

 

汐美真帆 (資料を見つつ)主役じゃないですか。すごい。

 

野口大輔 役は演出家の方に決めてもらいました。実はその方が演出した舞台のオーディションに、以前落ちたことがあったんです。これも縁なのかなとも思いますね。

 

汐美真帆 実は私、オーディションは1つしか受けたことがないんです。それが『RENT』のオーディションでした。私は宝塚を辞めたら、芸能活動を一切辞めようと思っていたんです。そんななか、大好きな『RENT』が日本でやると小耳にはさんで、受けてみようかなと思いました。当時住んでいたニューヨークのカラオケボックスで歌を撮って送りました。大分経ってから、「書類審査を通ったので来てください」と連絡が来たので、日本まで受けに行きました。

 

野口大輔 ニューヨークから受けに行ったって、かっこいいなあ。(笑)でも随分お金のかかるオーディションになりますね。交通費は自腹ですよね。

 

汐美真帆 そうですね。(笑)でも応募してから、なかなか連絡がこなくて、これは落ちたなって思ってたんです。実は日本に帰国することを決めていて、ニューヨークで使っていた携帯電話も契約が切れようとしていました。そんな時、通過の電話がきたんです。

 

野口大輔 縁があったんですね。ちょっと遅れてたら「この電話は現在使われておりません」でしたよ。

 

汐美真帆 たしかに、もう落ちたと思っていましたから。3000人の書類審査だったと聞いています。だから選定に1ヶ月くらいかかったのでしょうね。そこから全部で8次くらい審査がありました。8次って多いんですかね。オーディションは『RENT』しか受けたことがないので、他はどうなんでしょう。

 

野口大輔 僕が受けたなかでは、最高でも4次でしたね。まあ3000人の規模だとそれくらいになるのかもしれませんね。すごい。もともと、ニューヨークには語学留学で行かれたのですか?

 

汐美真帆 そうです。芸能の仕事は一切辞めようと思って行ったんですけど、結局こっちに流れてきたのは、やっぱり好きなんだろうなって思いますね。でも、オーディションはこれだけです。宝塚は試験でしたから。

 

野口大輔 オーディションと試験って何か違うんですか?

 

汐美真帆 宝塚歌劇団に入るには宝塚音楽学校という学校に入らなくてはいけないんです。2年間授業料を払うんですよ、学校ですから。だから本当に学校の受験という感じがして、オーディションとはちょっと違う感じがしますね。

 

野口大輔 宝塚音楽学校に2年間通いますよね。その後、全員、宝塚歌劇団に入れるんですか?

 

汐美真帆 まあ、だいたいはそのまま入りますね。ただ、何らかの理由で留年しちゃう人もいますし、厳しくて途中で辞めちゃう人もいますね。

 

── 噂には聞いていましたが厳しい世界なんですね。オーディションを受けるにあたり、特に気をつけていることがありましたら、教えてください。

 

野口大輔 自分を飾りたくなりがちですが、現状の自分をさらけ出すことを心掛けています。僕は無理に飾って失敗したことが何回もあります。その作品に向けて飾ったのではなくて、ただ自分を良く見せたいためだけに飾ってたんです。結局、それをやっても見抜かれてしまう。

 

汐美真帆 実はありのままの自分って分からないですよね。私も分からないです。でも、オーディションで求められていることを掴みとって、そのなかでいかに自分を発信できるかが鍵だと思います。

 

野口大輔 そのとおりだと思います。作品を理解したうえで、「僕こんな人間ですけどどうですか」くらいのスタンスで臨むのも良いと思います。それで使ってもらえれば良いですし、イメージに合わなければ「今回はちょっと…」ということになります。無理に飾ろうとすると背伸びしちゃってる分、ちぐはぐな感じが出てしまうのではないでしょうか。普段使ってないような言葉や考えをその場しのぎで発信してしまうと、なんだか薄い感じになってしまいます。オーディションの時だけ飾るという人は、たぶん苦戦すると思います。

 

汐美真帆 できるだけ自然体で臨むのが一番ですね。『RENT』はニューヨークのお話なので、オーディションのときはジーパンにトレーナーで「私ニューヨークから来ました!」というのをそのまま出そうとしましたね。その時はこれしかないかなと思って。

 

野口大輔 オーディションを開く側からすれば、イメージに合うか合わないかは、一目見てだいたい分かるんじゃないかと思いますね。「こういう感じの人が欲しい」というのが決まってると思いますから。

 

汐美真帆・野口大輔

 

舞台『THE BITCH』について

 

── 続いて気になる『THE BITCH』について教えてください。どのような舞台なんですか?

 

野口大輔 輪廻転生を題材とした不条理劇です。膨大なセリフが飛び交います。濃いキャラクターばかりなので目でも耳でも楽しめる舞台だと思います。

 

汐美真帆 シチュエーションは、現世と死後の世界の天界です。その中で、ビッチは死に癖のある魂として存在します。幾度の生まれ変わりのなかで、ビッチが天界でやりとりしたり、現代にまた違った形で戻ってきたりします。ずっと人間ではなく、ビッチはいろいろな形で生まれ変わります。ちょっと不思議な舞台です。

 

── 壮大で深いお話ですね。お二人の役どころを教えてください。

 

汐美真帆 私が演じさせて頂くビッチは、その名の通り、まさにビッチな役なんです。ビッチってあまりいい言葉ではないですよね。でも、かわいいビッチになれるように、みんなに好かれるビッチになれるように、こんなビッチもありかなと思って頂けるように、ビッチになりきりたいと思います。

 

野口大輔 僕はビッチと天界でやりとりする茶坊主という役を演じます。とにかく今まで演じたことがない役です。さまざまなビッチと向き合っていきます。

 

── ビッチは魂の名前ということですが、かなりユニークなキャラクターですね。いろいろな形に生まれ変わっていくのですね。

 

汐美真帆 草になったり蝶になったりしますね。でも魂はいつだってビッチです。(笑)挫折感をいつも抱えている魂なので、生きるのを放棄したくて、すぐに自殺しちゃうんですよ。でも、魂と魂のふれあいを繰り返すうちに、だんだん生きる喜びを感じて成長していくんです。

 

野口大輔 皆に愛されるビッチなんです。最初は「え?」って思われるかもしれませんが、観ていくに連れて、だんだん応援したくなっちゃうと思います。

 

汐美真帆 そうなればすごく嬉しいですね。実は私だけがビッチではないんですよ。生まれ変わったら違う人が、それまで私が演じていた役をやったりしますから。だからみんなビッチなんです。

 

── ビッチな部分がどう描かれているのかとても気になります。

 

汐美真帆 ビッチは何度も何度も「私ってホント嫌なやつ」って自分で言うんですよ。たぶん、観て頂く方にも「嫌なやつだなあ」と映ると思います。そんななか、挫折感から自殺してしまうんです。でも、なんでそんなことをするかって言ったら、今の世の中が気に入らないからなんですね。「環境が悪いから自殺してやる!」なんて考え方もビッチなんでしょうね。

 

野口大輔 ビッチに映るように、周りのキャストが持っていってくれるような、周りがいろんな風に作り上げるような、そんなところも面白いと思います。汐美さんのビッチっぷりを堪能して欲しいです。

 

汐美真帆 日常で普通にありえそうな場面も、周りからはすごくビッチに見えるように書かれてます。人を騙したり、裏切ったりもします。でも、それだけじゃない。悪意だけでやってるんじゃないってところも観て取れると思います。

 

野口大輔 生まれ変わりが多いので、一見話は独立してるように見えるのですが、わりと繋がっていたりします。というのが稽古をやってみて分かってきました。多分、脚本家がビッチでないとこういう脚本って生まれないんじゃないかって思うんです。

 

── そうなんですか?

 

汐美真帆 はい、稽古場でビッチと呼んでます。(笑)

 

野口大輔 脚本の宇吹萌さんがビッチだからこそ生まれた作品なんじゃないかと思います。

 

汐美真帆 そういう部分があるからこそ創作意欲が沸くのでしょうね。だからみんなビッチになるんです。

 

── 『THE BITCH』が他の舞台と違うなあと思うところはありますか?

 

野口大輔 セリフが独特ですね。普通の舞台のセリフって意味がつながっているじゃないですか。でも、特に汐美さんのセリフって関係ない単語がポンポン出てくるんですよ。

 

汐美真帆 聞いたこともない言葉が出てきたりします。色々な名称も出てくるのですが、実在するものとは少し変わっていたりして、架空の世界になっているんです。そういうところも脚本がビッチだなあって思ったりします。生まれて初めて発するような言葉がたくさん出てきて、暗記するのが大変です。(笑)

 

野口大輔 独白(※相手なしに、1人でセリフを言うこと)も多いですからね。

 

汐美真帆 命だけでなく、言葉もすごい輪廻転生するんですよ。私が言ってた言葉のニュアンスを他の誰かが言ってたりするんです。

 

野口大輔 茶坊主もこれまでやったことのない感じの役だからこそ、やってみたいと思いましたね。実は他の役もやってみたいなあと思ってました。蟻の役はセリフに「バッタのジュース」なんて出てくるんです。「気持ち悪!」って思ったんですけど、きっと蟻にしたら、とてつもないご馳走なんだろうなあ、なんて考えたりして。

 

── 非常に興味が湧いてきました。

 

汐美真帆 ふしぎな舞台なんです。観ないと分からないかもしれません。だから観にきてください!

 

野口大輔 役者さんもキャラの濃い方が揃ってます。

 

── ぜひ拝見させていただきます。魅力的な舞台であることもさることながら、汐美さんが初主演というのもとても驚きました。座長としての意気込みなどをお願いします。

 

汐美真帆 自分は座長という感じじゃなくて、それこそ『THE BITCH』という感じなので。(笑)ストレートプレイも初めてですし、気負わずにいきたいと思います。私がっていうより、脚本の宇吹萌さんの思う方に皆が向いていけるような、そんな雰囲気で行けたらいいなと思います。あとは皆が自由に居れる場所にしたいです。この台本に吸い込まれてきた人というのは、年齢や環境がバラバラなのに、なにかしらご縁があって、集まってきたのだと思います。なので、持っているものをそのまま出してくれたら嬉しいです。そして、それをそのまま三越劇場に持っていって、すばらしい舞台を皆さんにお届けしたいです。

 

汐美真帆・野口大輔

 

オーディションプラスユーザーへのメッセージ

 

── 最後に、役者や芸能界へ憧れて頑張っている「オーディションプラス」のユーザーへ応援メッセージをお願いします。

 

汐美真帆 「夢は叶える」ものだと自分を信じて頑張って欲しいです。「夢”を”叶える」だと叶っていないじゃないですか。「夢”は”叶える」だともっと現実的になると思うんですよね。夢が自分のテリトリーの中にある感じがします。私が宝塚にいるときも、ずっとあの役やりたいなって思い続けていました。宝塚に入ることも、『RENT』に出られたこともですし、今回『THE BITCH』の主演をさせていただくことも、本当に思っていたことが叶ったんです。

 

野口大輔 すごいですね。

 

汐美真帆 「こうなったらいいな」とか「ああなったらいいな」というのはいつも持っていました。それがきっと、いろんな人に伝染して、こっちにチャンスが回ってきたのかなと思います。だから、「夢”を”叶える」って思うよりは「夢”は”叶える」って信じてます。

 

野口大輔 僕は、この世界はいくつになっても「挑戦」の連続だと思います。失敗しても成功しても常に新しい挑戦が待ってます。自分を信じて挑戦し続けてください!自分を信じられるのは自分ぐらいですからね。

 

汐美真帆 でも、私、自分を信じられないときもあるんですよ。

 

野口大輔 実は僕もなんです。自分を信じたいから、あえて言い聞かせてますね。昔は自分が好きではなかったんです。でも、まずは自分を好きにならないと、好きになってももらえません。

 

── 若い方からは「自分に自信がない」という声もあります。

 

野口大輔 もしかしたら、欠点と向き合うことも大切なんだと思います。ダメな部分はあるけれど、その分、他の部分が際立つというように。

 

汐美真帆 はい、欠点を見つけることもすごく大事だと思います。そこが魅力になったりするじゃないですか。そういう役が来たりもするだろうし。自分の良いところばかり見ていたら、自分と同じような欠点のある役が来たときに、その役のことを嫌いになって、受け入れられなくなるかもしれません。でも、良いところも悪いところも、全部ひっくるめて自分だって思ったら、いろんな風に役作りも広がっていくと思います。宝塚でも、何でもできる人が全員トップスターになれるわけでもなくて、歌がそこまで上手くなくても、スター性があるとか見た目が華やかといった理由で駆け上がっていくこともありますしね。

 

野口大輔 皆それぞれ、これが得意とかあると思うんです。でも僕はそれに奢らず、やったことないことでも飛び込んでいく勇気はいくつになっても持っていたいなって思いますね。それが成長に繋がります。今回『THE BITCH』で難しい役に挑戦したのは、自分の成長のためでもあります。

 

── 成長につながるお話をたくさん頂きました。ありがとうございました。舞台『THE BITCH』も楽しみにしています!

 

 

舞台『THE BITCH』公演詳細ページ

 

 

 

取材・文 / 倉本浩栄 撮影 / 千葉伸吾