トリッピー表現力教室 代表・大門まき様 取材レポート|自分で考え多角的に物事を見る力を養う

オーディションプラスでは出演者を募集しているさまざまな団体にお邪魔して、各団体の取り組みを客観的に掘り下げていく企画「オーディションプラス取材レポート」を立ち上げました。

 

表現者を志す方、団体を運営されている方だけでなく、芸能活動の内情を知らない方々にも、この企画を通して様々な表現活動の魅力を発信して参ります。

 

その第一弾として、東京都渋谷区にある子供と大人のための表現力・コミュニケーション教室「トリッピー表現力教室」さんに取材協力していただきました。

取材・文:嶋垣くらら

舞台女優・声優

Twitter:@kanikama444

 

トリッピー表現力教室

 

まずは教室の代表取締役を務める、大門まきさんにお話を伺いました。
大門さんは演劇集団円の女優として、20代の頃から舞台、ドラマ、声優、歌の仕事など数多くの現場を経験されており、2012年にトリッピー表現力教室を設立。

 

このインタビューでは、教室で学ぶ子供たちが主体となって作られる舞台『ゴミが見える!』に関するお話や、表現力教室の成り立ちについて、大門さんご自身の経験談も交えながら話してくださっております。

 

舞台『ゴミが見える!』のオーディションについて

 

── 今までにオーディションは、何回か開催されているんですか?

 

大門さん 去年からすでに3、4回ですね。舞台『ゴミが見える!』のオーディションのみです。トリッピーは元々スクールですから。

 

── では舞台に参加している子供も、スクールの生徒さんを中心に構成されているんですね。

 

大門さん そうです。舞台 『ゴミが見える!』は、子供たちが社会を学ぶために行っているところが大きいので、彼らの「舞台を一から作ってみたい!」という夢に対して、協力してくれる大人の俳優を募集していたんです。
ただ、子供たち同士で新しい刺激を受けるのもいいと感じているため、もし参加したい子供がいたら「ぜひ来てね」という形で、今回の掲示はさせていただきました。

 

── 審査をするときは、例えば大人でしたら、どういう人を求めているのでしょうか?

 

大門さん 第一に、子供が好きなこと(笑)あと、あんまり強く言わないっていうのかな?がっちり固定観念が固まっている感じの人だと、ちょっと難しいかもしれません。うちの教育理念では「〇〇しなさい!」って言い方は絶対にしないんですよ。
去年実際にやった舞台でも、最初、稽古場がすごくうるさかったんです。でも子供たちが徐々に、自分たち同士で注意をしていき、最終的には幼稚園生もずーっと出番がくるまで座って待つことができるようになったんです。大人は、学校の先生みたいに「静かにしなさい!」「座ってなさい!」っていうのは1回も言わない。周りを見て学んでいく、そういうところに共感してもらえるかどうかっていうのは大きいかもしれないですね。
前回募集をしたときも「子供に力を貸してくれる人」という書き方をさせていただいたので、ギャラやキャリアで選んでいる感じではない方が多かったですね。

 

── オーディションで選考をするときに、意識されていることはありますか?

 

大門さん 威圧的にならないようにっていうのはあります。自分がオーディションをたくさん受けていた身だから、よくわかるんですよね。空気感がピリピリすると、言いたいことも言えないっていうことがあった。それで審査する側が個性をピックアップできないっていうのは絶対にマイナスだと思っていて。それなら、みんなが自分の個性を出してくれて、その中で適性を見ていける方が絶対にいいと思っています。

 

企画も制作も子供たちが主役の舞台

 

── 昨年舞台公演を打ってみて、手ごたえみたいなものってなにかありましたか?

 

大門さん とてもよかったことは、子供たちの成長がすごく大きかったことです。全て一から作りたいと、彼らが言ったことが発端だったため、予算を全部出して、「お金がどれだけ必要か、チケット代をもらうことがどういうことかわかる?」と、制作面のことを伝えました。それと、みんなが自分たちのために協力してくれていることも伝えました。結果、終わった後に、沢山の人が関わってくれたことに感謝をしていました。
もう1点は、物作りのプロセスを彼らは一通り体験したので、「次の公演どうするの?」と聞いたときに、「協賛金を集めなきゃね」と自然と口に出したり…

 

── すごい。子供から協賛金なんて言葉が出るとは…。

 

大門さん イベントとか人と会ったりする時に、彼ら自身が「舞台をやります。協賛お願いします。」と、大きな募金箱を持って立ったりしたんですよ。それでお金を頂く経験もしたから、お金が必要だということもわかったし。チラシも自分たちで必要情報を考えたり、チケットも手作りし、電話をかけたりお手紙を書いたり…

 

── 大人でも制作の仕事をやる機会ってあまりないので、とてもいい体験ですよね。生徒さんは、自分たちで全てやることに不安はなかったのでしょうか?

 

大門さん 最初は勇気が必要だったかもしれないけど、今は全然思わないでしょう。ね。(近くにいた生徒がうん、と答える)

 

── 皆さん、たくましいですね。

 

大門さん そうですね。でも、これくらいじゃなきゃ自立心や自主性は育たないと思うんです。大人になってからやるとキツいじゃですか。私自身がそうでしたから。そういうのを知らないまま大人になっちゃって、社会に揉まれて、傷ついて。学校では教えてくれないんですよね。だから彼らには、言葉だけじゃなく本当に一から制作過程を体験してもらいました。
舞台は、今後も彼らがやりたいと言い続ける限り、行うと思います。私は「次どうする?」と聞くだけで、「やれ」とは一回も言わないですし、やりたいなら、力は最大限貸すよと言います。私は教育のために、舞台という方法をとっているだけで、彼らが思い描いたことを現実化したいから手伝っているんです。

 

── 教室の生徒さんが主体となって作られている舞台なのですね。 自分の意志で作るという感覚は、今の大人の現場でも得難いものだと思います。

 

大門さん だから人間的にも育っていて、面倒見がめちゃくちゃいいんですよ。下の子に対してのフォローとかすばらしいです。自分が今まで上の人に優しくしてもらっていることが体に残っているからだと思うんですが、自分より下の子に対してすごくやさしいです。1人の人として扱っていて、自分のことだけ良ければいいという風に思っていないことが接し方を見ていると、よく分かります。

 

── 前回の出演者の年齢層って、どのくらいだったのでしょうか?

 

大門さん 4歳から、一番大人は60歳とか…

 

── 今まで聞いてきた中で一番広いです(笑)

 

大門さん 面白いですよね!場が成立していました。4歳の子も自分の役割を全うしていました。

 

トリッピー表現力教室

 

悩む役者へのアドバイス

 

── 大門さんご自身は、27歳の頃に役者以外の道を考え始めたそうですね。現在役者をやる上で悩んでいる人に向けて、アドバイスなどがあればお聞きしたいです。

 

大門さん アドバイスって言うと、なんか偉そうであんまり言えないけど…(笑)
自分が納得するのが一番だから、やりたいんだったら自分の気の済むところまでやればいいと思います。
ただ、私がやってきて思うのは、俳優として売れたいなら、そういう土俵に行かないと難しいということ。自分がどういうスタンスで俳優をするのかを、決めちゃった方がスッキリするんじゃないかなと。趣味と割り切って行うのもいいと思うし、別の仕事をしながら演劇をするのもいいと思うし、自己実現の為に行うのもいいと思います。テレビで活躍している俳優たちは、やっぱりすごいですし、選ばれるだけあるよねって感じます。思っている以上に芸能界で活躍するのは厳しいので、覚悟が必要ということを知ってほしいですかね。

 

── 厳しい環境で、経験を積んできた方にしか見えない世界がありますよね…。大門さんが土俵を変えたきっかけは、何だったのでしょうか。

 

大門さん それこそ27のとき、「何か違うな」と感じました。そのときは自信もなかったし、オーディションに行ったり現場に行ったときに、出会う俳優たちがすごい人たちだな、としか思ってなかったんですよ。
今だに覚えてますけど、ある監督の映画に声の出演で収録に行ったら、監督の横に若手の俳優が座っていたんです。「あれ、今日私しかいないはずなのになんで彼がいるんだろう」って思いました。彼が、事務所に言われてなのか、本人の意思なのかはわからないけれど、監督につきっきりで自分の熱意を伝えてるんですよ。それを見て私は、「彼みたいに出来ないな。あそこまでの覚悟がないと難しい世界なんだろうな」と痛感して。じゃあ何をしようかと考えて、自分の得意なことを見つけていったら、それが会社の前身になって…

 

── それも、すごい行動力ですよね。今はこうして、ご自身のスキルを活かした演劇への関わりかたをされているのですから。多様化が進んでいる今の時代だからこそ、こういった場所は必要だと思います。

 

大門さん この教室を立ち上げて6~7年経つんですけど、最初のころは「表現力ってなんなの?」なんて思われていたようなんですよ。それが、6~7年前に教室の近所に住んでらしたお母さまに久しぶりにお会いしたら「先生!今、時代が来てるじゃないですか、表現力!その時は分からなかったけど、今は大事さが分かります」って(笑)周りもそういう風に見てくれるようになったんだなって。

 

── ”教室”という形をとることで、お母さん方とか、普段演劇と接点がない人たちと交流できるのはいいことですよね。

 

大門さん そうですね。そういう意味でも当教室は演劇界に少し貢献しているのかもしれないですね。一般の方が思っている以上に、俳優のスキルって高いと思うんです。しっかりしている人は、ですよ(笑)
私は、ロシアの演劇人スタニスラフスキー氏の「俳優教育=人間教育」という考えにすごく共感しています。だから私の俳優としてのスキルを活かしつつ、演技の向上のためのエクササイズを、子どもにもわかるよう、かみ砕いて体系化したものを教育に取り入れています。子どもたちがどんな仕事に就こうと、最終的には、表現力とコミュニケーション力と心の豊かさ、”人間力”が必要だと思っています。「胸をはって生きる。表現は手段。ゴールは真の自立。」が教育理念です。彼らの将来の姿を想像しながら指導しています。

 

 

この後、実際に行っているレッスンを見せてもらいました。その内容をお届けします。

 

表現力教室のレッスンの様子

 

レッスンの中には、筆者も過去にやったことがある内容もありました。
つまり、子供にも理解できるよう噛み砕いて伝えているだけで、彼らは大人顔負けのレッスンを行っているということになります。
大人顔負けといっても、トリッピー表現力教室のレッスンは子供に強制するようなやり方ではなく、あくまで自主性を尊重したのびのびと学べる空間でした。

 

大門さん 「ロシアの演劇大学の先生が、日本に来られたときに教えてもらった内容を、子供たちのレッスンに取り入れています。ロシアの俳優教育はしっかりしているんですよ。毎日12時間、演劇を学問として学んでいるんです。やみくもに演技をすればいいというものではなくて、体系立って教えているそうです。ここで取り入れているような身体訓練もそうですし、フェンシングとか、世界各国のダンスに、歴史や美術、文学、哲学とか、ありとあらゆることを勉強しているそうです。(子供たちに)そういうの、ちょっと入れてやってるんだよ?(笑)」

 

子供たち 「そうだったんだー!」

 

大門さん 「そうだよ!すごいことやってるんだよ君たちはー!」

 

まずは、コミュニケーションのレッスンです。輪になって座る大門さんと生徒たち。この時間帯の生徒は中名生シオン君、中名生タケル君、二宮まりあちゃんの3名です。

 

トリッピー表現力教室

 

大門さん 「じゃあ、”相手を喜ばせる”にしようか。」

 

相手を喜ばせようという気持ちを込めて、手拍子を相手に向かって叩く。相手に喜ばしい変化が出たら成立したということ。

 

子供たちは思い思いの表現をしながら手拍子でコミュニケーションをとっている。「もっとパワーを出したほうがいいんじゃない?」「今のは曖昧だったな~。」
怒りの表現になると、叩く手にも力が入り、みんな手を痛そうにしていました。

 

次は、動きに特化した表現のレッスン。

 

大門さん 「”かっこいいポーズ”をやりましょう。かっこいい姿勢。肩幅に足を開いて…パラレルだよ。パラレルってなんだっけ?」

 

トリッピー表現力教室

 

手を組んで、上にぐーっと伸びたあと、手をはなして脱力。子供たちの、ふーっという吐息の音だけが静かに響き渡ります。

 

大門さん 「背骨を一本一本、下から組み立てて起き上がってきます。ゆっくりね。起き上がった人は、最初のかっこいい位置に。自分のまっすぐ、だよ。覚えてる?お、かっこいいなあ!」

 

大門さん 「次は、”動物の動き”をやりましょう。自分の体を、自分の意思でコントロールできるようにするためです。」

 

犬、ワニ、カンガルーにサル。それぞれ身体の使い方の特徴を捉えていて、本格的です。
子供の「兵士がやる訓練みたいだね。」という言葉に対して、「そうだよ!肉体訓練だよ!(笑)」と言う大門さん。俳優は、身体を鍛えることも大切ですものね。

 

トリッピー表現力教室

 

今度は、他人と協力するレッスン。相手を感じる力、集中力が必要になります。

 

大門さん 「では、呼吸を合わせて歩く、をしましょうか。歩きはじめと終わりを合わせて、始めるタイミングも自分たちで決めて。集中する相手は私じゃなくてシオン君だよ。」

 

トリッピー表現力教室

 

途中、集中が途切れそうになった弟のタケル君。それでも、小二とは思えない真剣なまなざしにひきつけられました!
筆者が同じ歳のころ、あんなに集中力があっただろうか…?

 

終わったあと、「あんまりできてなかった気がする…歩くスピードが違う」と言ったタケル君に、「良い気付きだね、気付いただけでもいいんだよ!」と声をかける大門さん。おっしゃる通りです!

 

そのあとは、発声のトレーニング。

 

大門さん 「じゃあ、声を出しましょうか。その高さだと、ひっくり返さないと出せないよ。縦に開けてほしいなー!そうそう、いい口してるじゃん。きれいな裏声だよ。どっかで元気な声にチェンジしたほうがいいんじゃないかな。最後は、おばけの声だよ。」

 

噛み砕いた表現でわかりやすく伝えながら、何度も「いい声出てるね!かっこいいね!」と声をかけ続ける大門さん。いつでも、決して子供を否定するようなことを言いません。

 

トリッピー表現力教室

 

タケル君 「うーん、ダメだった。」
大門さん 「えー!なんでそんなに自分に厳しいの?」
タケル君 「わかんないから。まだ小さいし。」
大門さん 「普段、そんなこと言わないのに…(笑)大丈夫だよ、上手だったよ。」

 

知らない大人に見られて、少々不安にさせてしまったのかも…?
このように、生徒さん自身が自分を客観視した発言は多くあり、この教室で教えている観察・分析といったプログラムが活きているのを感じられました。

 

最後はちょっと、難易度の高いレッスンです。

 

大門さん 「ここに、後ろを向いて立って、こっちを向いて、12345678910…って言いながら私のほうに歩いてくる。”うれしい”を表現しながら。私を”喜ばせる”んだよ。声と、気持ちをだんだん大きくしていって、”喜ばせる”を上げていくんだよ。動きを入れてもいいよ。気持ちが作れるまで後ろを向いて、できたら自分のタイミングで動いて。」

 

このスクールに長く通い、実際の現場でも活躍しているシオン君。
後ろを向いて考えるその背中を見ているだけで、真剣さが伝わってきます。

 

トリッピー表現力教室

 

シオン君 「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10!」
大門さん 「変わってない。もっともっと。人を喜ばせるんだよ。自分の中でしかやっていないからね。私を捉えてない。今日は色んな人がいるけど、他の人は関係ない。動きがあってもいいんじゃない?回ったって踊ったっていいんだよ。面白い顔してもいいかもしれない。」

 

悩んでいるシオン君にアドバイスを送る大門さん。
大人になればなるほどに、自分はこれでいいのだろうかと、不安になることもあるのかもしれません。

 

ですが、だんだんと照れが出てきたのか、最後は思わず笑ってしまったシオン君。

 

大門さん 「うん、よくなったよくなった!こっちも嬉しくなって笑っちゃったよ。さっき無理だなって思って自然に笑っちゃったでしょ?それが大事なんだよ!おもしろくて、自分が笑っちゃうよーって気持ちを、いつも持っておけたらいいよね。それを計算して、大きくしたり小さくしたりできるようになったら、もっと良くなるんじゃないかな。」

 

トリッピー表現力教室

 

二人とも、”人の心を動かす方法”をしっかり考えながらトライする姿が印象的でした。
皆さんならどうすれば、人を喜ばせられると思いますか?

 

子供たちに聞いてみました

 

レッスンを見せてもらったあとは、子供たちがインタビューにこたえてくれました。

 

中名生シオン君・中名生タケル君の兄弟は、このスクールに6~7年通っており、昨年上演された舞台『ゴミが見える!』にも出演しています。

 

トリッピー表現力教室

 

── 去年の舞台ではどんな役を演じたのですか?

 

シオン君 「ぼくは、息子と体が入れ替わったおじさん探偵の役をやりました。」
タケル君 「ぼくは“ごすけ”っていう、妖怪の猫をやりました。」

 

シオン君 「意味わかんないですよね。」
大門さん 「君たちが考えたんじゃない(笑)」
タケル君 「裏設定とかもあったんだよ。」

 

── 裏設定まで、すごい。プロの俳優のようなことまでやっているんですね。
では、去年舞台をやってみて、うれしかったことってありますか?

 

シオン君 「人がいっぱい集まってくれたことですね。知らない人たちだったけど、本番が終わってすごく仲良くなって。」
タケル君 「うれしかったことは…大人の人が、すごく優しくてよかったです。」

 

── 一番大変だったことは?

 

シオン君 「練習ですね。ほぼ毎日あって大変だったけど、短い間でがんばって、成功できたのでよかったです。」
タケル君 「台本を覚えるのが大変でした。」
大門さん 「普通の大人がやる量を覚えたんです。70分の公演で…」
タケル君 「それを一日に二回やるのはキツかった。」

 

── 本番は緊張しましたか?

 

シオン君 「初めてだから緊張したけど、後のほうになるとなれてきました。」
タケル君 「出たら自然に緊張がなくなった。」

 

── 二人ともすごい。きっと、たくさん練習したからこそなんでしょうね。
あとは…二人から見て、大門先生はどんな先生ですか?

 

シオン君 「怒るとこわいけど…すごい優しい先生です。聞けば教えてくれるし、すごいわかりやすい。」
タケル君 「同じですね。とにかく優しくていい先生です。」

 

── 先生は、生徒さんたちにとても慕われていますね。二人は、将来なりたい物ってありますか?

 

タケル君 「お店屋さんと、俳優ですかね。」
シオン君 「俳優は、やれたらやりたいです。あとは、プログラミングが好きなんですよ。それとゲームが趣味なので、それをいかした仕事がやりたい。」

 

── 二人とも、取材に協力してくれてありがとうございました!

 

 

トリッピー表現力教室で演技レッスンを受けているのは、4歳~中学生までの子供たちと、大人。年齢に応じた内容を教えており、小さい子供のクラスでは特にコミュニケーションを重視した内容が多く、台詞を使った練習は発表会の前にだけ行っているそう。
何をやるにも大切な土台となる“見る力”をまず養うことで、子供たちはみんな、自分の目で見て、自分の考えを出すということができていました。

 

この教室のメソッドについて、大門さんはこう語っています。

 

「内観するって、自分を磨いて生きる為に大切だと思うんです。自分の評価と、他者からの評価は絶対に違います。自分も元々は落ち込みやすい人間だったので、何かあると、すぐに『私なんて…』と思っていて。でも今、客観的に振り返ってみると、実際は、そんなことなかったと、気づきました。だから当教室では、冷静な判断をして、多角的に物事を見るためのプログラムを、4歳クラスから入れています。」

 

この教室の生徒さんは、本当に素直な子達ばかりだという大門さん。
さまざまな視点から物事を見させることで、自信がつき、人にも優しくなれるのかもしれないですね。

 

オーディション練習の様子

 

またこの日は、生徒さんのオーディション練習も見学させてもらいました。

 

この日練習に来たのは、りおちゃん6歳。

 

まずは練習をする為、オーディションの目的をりおちゃんに丁寧に伝えます。

 

大門さん 「面接のおじさんがりおちゃんの写真を見て、どういう子か知りたいな、会ってみたいなって思ったら、面接に呼ばれるんだ。小学校の試験の面接とちょっと似てるよね?小学校と違うところは、好きな女優さんは誰ですか?とか、好きなテレビ番組はなんですか?とか、お芝居のことを聞かれるかもしれないところだよ。だけど、せっかく呼んでもらったのに、おじさんたちの前で、りおちゃんが話せなくて困っちゃったら、悲しい気持ちになるかなって思ったんだ。だから、練習してもいいかな?」

 

トリッピー表現力教室

 

自分の発言に責任を持って行動する、自立心を身につけてほしいという思いから、この教室では子供に”選択させる”ということを徹底しています。
りおちゃんに対しても、大門さんは彼女の目線に立って、自分自身で納得して答えを出せるように言葉をかけていました。

 

りおちゃんが納得したところで練習開始です。まずは面接の練習から。

 

大門さん 「りおちゃんの得意なことってなんですか?」

 

りおちゃん 「運動です。」

 

大門さん 「あ、運動なんだ?例えばどんなこと?」

 

りおちゃん 「走ることとか、なわとびとかです。」

 

大門さん 「そうなんだ…!あのさ、りおちゃん、演技も上手なんじゃない?違ったかな?」

 

りおちゃん 「………うまかった。」

 

大門さん 「(笑)そうだよね、りおちゃん演技上手いからさ、得意なことなんですか?って言われたら、運動と演技ですって言ってもいいような気がする。違うなって思ったら言わなくてもいいけど、どうかな?」

 

りおちゃん 「そうする。」

 

大門さん 「そっか。ありがとう。りおちゃん演技上手だから大丈夫だよ。」

 

トリッピー表現力教室

 

その後は、テキストを用いた演技の練習に。

 

一緒に台本の読解をしてから動きをつけて、すぐに稽古に入ったのですが、なんとりおちゃん、もう台本を離していました。

 

大門さん 「台本もう覚えちゃったの?すごいじゃん、りおちゃん!あまりに上手いからもう一つだけやってほしいんだけど、今本当に泣いているように見えたからさ、もうちょっと泣いてもいいよ。泣きながら、気持ちのところで泣いちゃいけない、泣いちゃいけない…って思ってから、もう泣かないぞって決めて、”でも仕方ない。私は一人で生きていくんだ”って言ってみて。りおちゃんなら出来ると思う。」

 

りおちゃん 「どうやってやればいいかわかんない。」

 

大門さん 「大丈夫、先生が一緒にやってあげるから。泣いて…そうそう。だんだん頑張れそうな気持ちになってきて…すごい良くなったじゃん!ばっちりだよ。今やってみて、自分でどう思った?」

 

りおちゃん 「出来た。」

 

大門さん 「そうだよね、私もそう思うよ。女優さんみたいだった。」

 

トリッピー表現力教室

 

子供だから記憶力がいいというだけでなく、台本を渡されてすぐ理解し覚えられるのは、この教室で大切にしている”見る力”があってのものなのかもしれません。

 

また、この稽古では、りおちゃんの”考える力”も光っていました。

 

りおちゃん 「台本に書いてないことも言っていいの?」

 

大門さん 「もちろん!どうぞご自由に。書いてないこと言ったら、すごくいいかも。」

 

りおちゃん 「よいしょ、よいしょ、はぁ、はぁ…やっと着いた~。いい景色だな~。人間も小さく見えるし…」

 

大門さん 「いいじゃんいいじゃん!そこまでやってくれたお友達は初めてだよ!最初の動きは、転んじゃったのかな?動きも工夫していたし、台詞も今、自分で考えたんだもんね。」

 

りおちゃん 「途中で考えた。」

 

大門さん 「途中で?りおちゃんすごいなあ!お芝居、向いていると思うよ!ずっとやってくれたらいいのに。」

 

トリッピー表現力教室

 

りおちゃんは、ほんの一部分のシーンから、役の状態、周りの状況などをしっかりと読み取った上で、オリジナリティを発揮していました。山の頂上に着いて言った「人間も小さく見える」には、本当に驚かされたものです(笑)

 

もっとも、大人のオーディションや現場では、勝手なアドリブは好まれないかもしれませんが…このりおちゃんが自分で考えた台詞は、台本を理解した上で、より表現を深めるためのものだったと思います。
ベテラン役者でも、いいところを見せたくてつい小手先の表現に夢中になってしまうことはあります。しかし、心から演技に没頭して楽しむ姿は、なによりも見る人の心を打つのではないでしょうか?

 

”想像力”という土台を作ることで、人は自発的に考えるようになり、やがて唯一無二の個性が確立されていく。
ここで学ぶ生徒さんの心の豊かさには、大きな刺激を与えられました。

 

取材を終えて

 

実はこの日、筆者もとある舞台のオーディションに行き、その足で取材に伺ったのですが、子供たちの個性とエネルギーに圧倒されるばかりでした。自分は、なんてつまらないことを気にしていたのだろう。この取材をしてからオーディション行きたかったと、心から思いました。

 

第一に、演技は表現をすることであり、評価をされるためのものではない。オーディションは確かに人を評価するものですが、仮に落ちても、それはあくまで個性が噛み合わなかっただけのこと。自分自身が否定されているわけではないのです。
”何のために”オーディションをやるのかという目的意識を、選考する側もされる側もしっかりと持つことで、目先の利益に捉われない、よりよい人と人との出会いに繋がっていくのではないでしょうか?

 

教室の子供たちはみんな礼儀正しくて、周りがよく見えていました。それは力で抑圧されたものではなく、舞台や教室でのレッスンを通して、自然と身に着いたものだと思います。
今芸能活動をする中で悩みを抱え、自信を無くしている方もぜひ一度、人や自分自身をしっかり見つめるということを考えてみてもらえたらと思います。人に見てもらうことで初めて成り立つ私たちの活動は、一人では決して実現できませんよね。

 

大門さんの、子供自身に選択をさせ、自立心を育てるという教育方針は、これからの時代を作っていく子供たちを、より豊かな社会へと導く素晴らしい内容だと感じました。子供たちの未来を考えることは、きっと現代の社会を生きる私たちにもいい影響をもたらしてくれるはずです。
表現活動の多様化が進む今、それぞれに取り組む皆さんが、社会に認知してもらうためにできることは何なのか。それを追求していくことで、私たちの明日も、ほんの少し明るくなっていくかもしれません。

 

固定観念に捉われない大門さんや生徒さんたちからは、演劇に限らず、これからを強く生き抜くためのヒントを沢山いただくことができました。
トリッピー表現力教室の皆さん、取材にご協力いただき、まことにありがとうございました!

 

トリッピー表現力教室 今後の予定

 

・2020年8月に、舞台『ゴミが見える!』の再演が決まっております!
昨年はCAMPFIREにてクラウドファンディングを行い、728000円を集めて実現したプロジェクト。
舞台公演を実現するために、表現力教室の生徒さんが実際に取り組んだ内容については、ぜひこちらの記事をご覧下さい。
https://camp-fire.jp/projects/view/161899

 

 

・トリッピー表現力教室では、2020年5月から、表現力を身につけたい大人向けの「大門式表現力アカデミー」を開講予定です。
事前の体験会も開催されるそうなので、詳しくはトリッピーキッズのホームページをチェック!
https://trippi-kids.com/

 

取材・文:嶋垣くらら

舞台女優・声優

Twitter:@kanikama444

 

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