Domix第11回公演『アウターゾーン』インタビュー

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Domix第11回公演『アウターゾーン』インタビュー

『アウターゾーン』は、週刊少年ジャンプにて1991年~1994年にかけて連載された、光原伸先生によるオムニバス作品。「ジャンプ黄金期」とも呼ばれていたこの世代に、独特な世界観で存在感を放ち、今でも多くの人の記憶に残っている名作です。

 

2020年5月に、企画団体Domixさんによる初の「2・2次元舞台化」が予定されておりましたが、コロナウイルスの流行に伴い延期となりました。現在は再開に向けて、クラウドファンディングの準備などを進められています。

 

オーディションプラスでは、Domix代表であり漫画家の樹崎聖さんと、本作品の演出を務める佐伯啓さん、また、『アウターゾーン』の登場人物『ミザリィ』役を演じる夏陽りんこさん・嶋垣くららさんにインタビューを行い、オーディションにまつわるエピソードや、稽古の様子、公演の詳細に関するお話を語っていただきました。

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【Domixとは】
「次世代漫画(Comics)の次に来る」…と、「混ぜ合わせる」の意味をかけて作られた造語。
新しい漫画表現として、舞台上でスクリーンに映し出される漫画動画(モーションコミック)に合わせてお芝居をしている企画団体です。

 

樹崎 聖(きさき たかし):Domix代表
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日本の漫画家。大阪芸術大学デザイン科卒業。1987年にホップ☆ステップ賞に入選した『ff(フォルテシモ)』が『週刊少年ジャンプ』(集英社)に掲載されデビュー。代表作に、『交通事故鑑定人 環倫一郎』『10年メシが食える漫画家入門』『ZOMBIEMEN』など。
『アウターゾーン』作者の光原伸先生とは、少年ジャンプ時代にお互いの作品を手伝いあった友人。

 

佐白 啓(さはく けい):Domix11演出
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俳優。演出家や作家としても活動する傍らで、歌唱や作詞、被写体など、マルチな才能を発揮している。
『Domix』では、これまでに第三回公演・六回公演・九回公演と演出を手掛けており、今回の『アウターゾーン』で四回目となる。また、第一回公演・二回公演・八回公演ではそれぞれ役者として主演を務めており、代表の樹崎さんからも絶大な信頼を得ている。

 

夏陽りんこ(なつひ りんこ):Mチーム ミザリィ役
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声優・女優。声優としての代表作はアニメ『ガンダムビルドファイターズトライ(マヒル)』や『ポケットモンスターXY&Z(アケビ)』など。舞台としての活動も多く小劇場~2.5次元と幅広く出演している。
また俳優業の傍らコスプレやプラモデルなど趣味にも力を入れ、ファンのことを「下僕」と呼んでいる。

 

嶋垣くらら(しまがき くらら):Bチーム ミザリィ役
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舞台女優。2016年~2017年にかけて、ゲーム『ドリームクラブ』の2.5次元ユニット『劇団ドリームクラブ』に所属し、三代目受付役として、舞台・ライブ・東京ゲームショウなどに出演。
『Domix』には、第九回公演『Paranoia~パラノイア~』で初出演し、『ZOMBIEMEN』のキーキャラクター『ショボクロ』を演じている。趣味はお酒を飲むこと、写真を撮ること。

 

オーディションについて

 

―― オーディション選考は、樹崎さんと佐白さんでされたそうですが、どのように相談して決めているのですか?

 

佐白 基本的に、作品の雰囲気に合うか、役のイメージに合う声や見た目をしているかという部分は、樹崎さんの方が意識して見てくださっています。

 

樹崎 気になったことを言っているだけですがね。

 

佐白 でも、樹崎さんがそこを見てくれている分、僕は「どういう演技をするかな」とか、「役に対してどういう読み取り方をするかな」とか、演技に重点を置いて見ることが出来ています。

 

樹崎 技術的なところは彼が見てくれているので、僕は上手い・下手ではない部分を見ている、というのはあるかもしれません。

 

―― お二人それぞれに役割があるのですね。

 

佐白 僕は演劇の畑でずっとやってきているので、演技にウエイトを置きますが、樹崎さんは漫画家なので、キャラクターのイメージとか、そういう部分を見る能力が僕より長けています。「そうしましょう」と約束していたわけではありませんが、おのずとお互いが得意な方を見る形になりました。

 

樹崎 たまにそれで、僕がすごく下手な子を選んでしまうこともありますけどね(笑)

 

佐白 そういう時は、「さすがにあの人の力量では限界がありますよ」と意見させてもらうのですが…(笑)でも、みんなが総じて「上手くなかった」と言う人でも、樹崎さんが選んだ人は、あてがってみると意外とはまったりします。

 

樹崎 勘はいい方かもしれません。その後、結構活躍している人もいます。

 

佐白 本当に、馬鹿に出来ませんね。以降、オーディションばんばん通るようになった人もいますので。樹崎さんの方が、原石を見つける力があるのかもしれません。演技に対して、偏見なく見られるのがいいのかもしれない。もっと素朴な、「素質」的なところがよく見えているのだろうな、と思います。

 

―― キャラクター性を判断する時は、特にどういうところに注目されているのでしょうか。

 

樹崎 その時にもよりますが、外見や声質だけでなく、全体的な雰囲気を見ています。

 

佐白 それこそ、(ミザリィ役の)夏陽さんなどはその典型ですね。雰囲気からもう、「これしかないな!」というくらいでした。

 

夏陽 でも私、オーディションの時、前のグループがオーディションをしている最中に会場に入ってしまって、「やってしまったな…」と思っていました(笑)

 

佐白 それが出ていなかったのが、一つの強みだったのかもしれませんね。いい意味で堂々としていると言うか。ミザリィらしい妖艶さがあった、とかではなく、ちゃんと自分のペースでいられる感じが、ミザリィが持つ芯の強さを表現する時に、上手く合いそうだなと思いました。

 

樹崎 第一印象で「ああ、ミザリィだ」って思いましたよね。

 

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『アウターゾーン』の案内人(ストーカー)として登場する『ミザリィ』。少年時代、あこがれの女性だったとの声も多い人気キャラクターです。

 

夏陽 それはありがたいですね。オーディションって、何か一つでも印象に残ればいいなと言いますか、今回選ばれなくても印象に残れば、違う作品や役で呼んでもらえることもありますので。それで物真似を披露したのですが、大丈夫だったかなって心配でした。

 

佐白 いや、あれは強かったですよ。今回ミザリィ役は「座長」という立場になるわけですから。座長って、上手いだけで近寄りがたかったりすると上手く回らないので、ああいう外しというか、遊びが出来る人だとみんな親しみやすいですよね。

 

嶋垣 私は、最初に提出するエントリーシートを、てっきりオーディションが終わるまでに出せばいいものだと思い込んでいて。何て書こうか迷っていたので、後回しにして準備をしていたら、佐伯さんに「エントリーシート、書いてくださいね」って突っ込まれてとても恥ずかしかったです…。

 

佐白 僕がオーディションをやる時の一番の特徴は、最初の質疑応答を大事にやることなので、そのためにエントリーシートの情報が必要だったのです。話題のきっかけというか。

 

樹崎 でも、そういうミスがあっても、いいリアクションを見せてくれたらいいと思っていますよ。そういう時に見える人柄ってあるので。失敗もチャンスと捉えるべきではないかな。

 

佐白 うん。リカバリー出来れば、ミスって大したことではありませんから。

 

―― なるほど。演技以外のところも良く見られているのですね。

 

佐白 その人の人間性みたいな部分は、大事にしていますね。極論、同じくらいチケットが売れて、同じくらいの実力であれば、間違いなく人柄がいい方を選びます。空気を悪くする人がいると気を使ってしまうので、自分が回しやすい現場にしたいというのはあります。

 

嶋垣 佐白さんの現場は今回で二回目になるのですが、前回本当にいい現場に恵まれたなと感じました。

 

佐白 ありがたいことに、どこかのタイミングで急に団結力が産まれることが多いですね。

 

嶋垣 Domixはこれまでに10回公演を行ってきているので、その積み重ねからの結束もあるように感じます。だからこそ、今回のオーディションで自分だけが落ちてしまったらと思うと受けるのが怖かったです。一回参加できても、次は受からないということがある現場なので。

 

樹崎 実力があっても、合う役がなければ通せませんからね。申し訳ないのだけれど。

 

佐白 ただ、『アウターゾーン』のオーディションに関しては、過去に出演経験がある役者さんも多く落としています。

 

樹崎 今までで一番「常連」の人が落ちましたね。

 

佐白 『アウターゾーン』を今回取り扱うことになって、僕らとしても非常に大きい作品ですから、劇場も大きいところを取って、予算も今まで以上に出して、今までより一段階ランクを上げた舞台を作ろうと言っていました。それに対して、今までのDomixの感覚で来ているな、という印象を受けましたので。

 

―― 初めて受けに来た人の気合いも、相当なものだったのでしょうね。

 

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延期になった、舞台『アウターゾーン』のフライヤー。原作者・光原伸先生の描きおろしイラストが使用されています。

 

―― 夏陽さんは、Domixさんに参加するのは今回が初めてだそうですね。どのような経緯でオーディションを受けられたのでしょうか。

 

夏陽 このオーディションは、ファンの方に勧めてもらいました。「りんこさんにミザリィ合うと思うよ」って。私はもともと『アウターゾーン』の朗読公演を観たことがあって、そこで声優さんが演じているミザリィを見て、「私もこういう役をやってみたい」と以前から思っていました。だからDomixのオーディションを知った時、「私にもミザリィが演じられる!これは受けるしかない!」と思い、申し込みました。もう、私の中では最初からミザリィ一択で。絶対に他の役では選ばれたくない、だったら選ばれなくていいというくらいの気持ちで受けていました。

 

佐白 その気合いは、こちらにも凄く伝わってきましたね。

 

樹崎 特定の役を狙いにきている人って、わかる人はわかりやすいです。他の役はやりたくないだろうなということが伝わってくる(笑)

 

嶋垣 私は逆に、自分に合う役があるか自信がありませんでしたが、「作品に関わりたい!」という気持ちで受けていました。Domixのオーディションは、第9回公演の時に初めて受けたのですが、それまで何度か公演を観る機会があっても、自分が参加することは頭になくて。9で取り上げられた樹崎さんの作品『ZOMBIEMEN』を読んだことで初めて、出演したいと思いました。Domixは、応募する前に原作を読めるところがいいですよね。ツイッターにハッシュタグを付けて投稿する、公開式の応募には勇気が要るのですが。

 

樹崎 宣伝効果を上げるためにやっていますからね。この方法を始めてから、応募数は飛躍的に伸びていますよ。

 

佐白 でも確かに、受ける側としてはツイートしてしまっている分、その後知らせが無ければ「落ちたのかな?」ってはっきりわかるので、プレッシャーではあるでしょうね。

 

夏陽 ファンの人は逆に、オーディションに応募した時点から知っているので、何もないところから役を掴み取って、『アウターゾーン』に出演するという道筋を見てくれている分、チケットの売り上げは全然違いましたよ。

 

佐白 そうか。ファンの人からしても、募集要項を見れば公演の詳細はある程度わかるし、早い段階で準備してくれているのかも。

 

樹崎 オーディションを受ける時の心情を公開することで、それ自体にもドラマが生まれますしね。

 

―― 挑戦する過程を見ることで、より応援したい気持ちも強くなるのでしょうね。

 

原作『アウターゾーン』について

 

―― 『アウターゾーン』をDomixさんで上演することは、いつから考えられていたのでしょうか。

 

樹崎 最初に光原先生に話したのは、もう随分前になります。はっきりとは覚えていないけれど、最初に「やりませんか?」と話をしたのは多分5年以上前だと思います。

 

佐白 Domixが立ち上がってすぐ位でしたよね、多分。

 

樹崎 本格的にやろうという話になったのは、それからずっと後になりますが、『アウターゾーン』をやるなら、それに相応しい規模でなければいけない、それだけの実績をまず上げなければ出来ないと思っていました。『アウターゾーン』をDomixで上演することが、一つの大きな目標になっていたのです。

 

―― 今回の公演を実現するにあたって、着実に実績を積み上げてきたのですね。

 

佐白 前回より規模を大きくしようというのは、毎回言っていましたね。

 

樹崎 目標があったからこそ、前回より公演の規模を小さくする訳にはいかないという思いがありました。

 

―― 今回の公演は10本立ての予定と聞いていますが、これは今までにないことですよね?

 

佐白 そもそも、そこまで短いお話をDomixで扱うことが初めてです。あまり公演自体が短い尺になると物足りないかなということで、10話やることになりました。

 

樹崎 短くて、楽しめる。これが『アウターゾーン』の面白さの本質でもありますからね。

 

―― 10話分の稽古を同時に進めるのは、大変だったのではないでしょうか。

 

佐白 欲張った、というのはありますね(笑)ですが、沢山観てもらいたかったので。

 

樹崎 それでも、もっと見せたいお話があったくらいです。

 

佐白 10話を選び抜くのも、結構時間がかかりました。今回、舞台装置にも力を入れたかったのですが、三次元でこの作品を実現するにあたって、短いストーリーの中で、場面の転換をたくさん挟むのは限界がありましたね。それで諦めたエピソードも結構あります。

 

―― 佐白さんの中で、本当はやってみたかったお話はありますか?

 

佐白 特に人気の高い、刑事「火牙(ひが)」と人形「マキ」の『マジックドール』シリーズはやってみたかったです。でもそれをやるなら、別の機会に『マジックドール』に限定した舞台をやれたらいいよねという話もあります。

 

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『マジックドール』は、基本的に一話~数話で完結する『アウターゾーン』の作品中でも、読者人気が高かったことからシリーズ化されたエピソードです。

 

―― もし実現したら、火牙さん役のプレッシャーは相当なものでしょうね。

 

佐白 間違いないですね(笑)今回の公演にも、新聞記者の的矢悟郎(まとや ごろう)役とか、作中に何度か登場するキャラクターがいますが、複数の話に登場するキャラクターを演じるのは、ミザリィに匹敵するプレッシャーではないかなと思います。

 

―― 今回ミザリィを演じるお二人は、プレッシャーなど感じていますか?

 

夏陽 あまりないですね。いえ、なくはないのですが、ミザリィや座組と向き合うことに神経を集中しているので、稽古中はあまり感じませんでした。ですが、ツイッターで知らない方から「ミザリィを演じるのですね」と声をかけられた時や、SNS上での反響を見た時に「それだけ知られているキャラクターを演じるのか」ということに対して、改めて責任を感じる場面は多々ありました。

 

―― SNSは、お客さんの率直な反応が見られますよね。

 

夏陽 あとは、本番にならないと湧いてこない実感もあると思います。衣装を着て、色々準備もして、それで本番の5分前位になって「あ、ミザリィとしてお客さんの前に出るのか!」って、急に実感が湧いてくるかもしれません(笑)でも、まだどうなるかわからないですね。ここまで、色々な年代の方が知っているキャラクターを演じることが今までになかったので、実感もまだありませんし、今までとは違った感情になるのかなと。

 

嶋垣 私は以前、ゲームのキャラクターを演じさせてもらった経験があるので、選ばれた瞬間から、緊張や不安がどっと湧いてきました。原作のある舞台って、受け入れられる方もいれば、そうではない方もいる。ですが選んでもらった以上は、やるべきことに全力を注ぐのみですし、それだけ愛されている作品を担うのだという自覚を持って、原作者の光原さんや、長くこの漫画に親しんできた読者の方々に対する、感謝の心を忘れずに取り組んでいきたいです。原作があってこその舞台ですから。

 

―― 原作に人気がある公演特有のプレッシャーですね。

 

樹崎 毎日、ツイッターで『アウターゾーン』に関するツイートを検索していますが、必ず何か見つかりますからね。拾うのが大変なくらいです。

 

夏陽 ですから本当に、「あの、アウターゾーン?あの、ミザリィをやるの?」って言われますね。「はい。あの、アウターゾーンです」って答えるのですが(笑)

 

佐白 「あの」って言われるくらいに、知られているということですよね。

 

夏陽 全部の話を知らなくても、「あの、綺麗な女の人が出ていて、不思議な話で…」って。小さい頃に読んでいたという人が、本当に沢山います。

 

嶋垣 ぼんやりとしか覚えていなくても、「確かこんな話があったよね」と話題にする方が多いですよね。子供の頃の記憶って、大人になるにつれて忘れてしまうことが沢山あるのに、その中で印象に残り続けているってすごいインパクトなのだなと感じます。それだけ、お話が怖かったのかもしれませんが…(笑)

 

―― それも大きいでしょうね(笑)

 

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嶋垣 「トラウマだ」と言う方も多くいますが、大人になってから読むとまた面白さがわかる話も沢山ありますので、漫画から離れていた人もこの機会にぜひ読みなおしてみてもらえたら嬉しいです。

 

夏陽 大人になってから私も『アウターゾーン』を読みましたが、それでもゾワッとする瞬間があるくらいですね。

 

樹崎 実は、ハッピーエンドで終わっているお話も多いのだけれど。

 

嶋垣 ですが、ハッピーエンド、と言い切れないお話もありますよね。今回Domix11で上演する作品で言うと『顔』とか、表面的にはハッピーかもしれないけれど、ミザリィから「本当にそれは幸せでしょうか?」みたいな問いかけを残す作品。

 

夏陽 そうですよね。当事者は幸せそうだけれど、それって本当のところどうなのだろう?と、考えさせられるお話が多いです。

 

樹崎 ショートストーリーの歴史から見ると、不幸な流れから最後に逆転してハッピーに向かう、という短編作品は多分『アウターゾーン』が最初で。そこがすごかった。

 

佐白 その中でも代表的な話が、『ママと悪魔』とか、『幸運の首』ですね。

 

樹崎 ああいうお話って、あのまま悲劇的な終わりになることが多いのだけれど、そこをそうしなかったのが、玄人をうならせたところですよね。最初に、光原先生のネームを読ませてもらった時から「すごいな!」と思っていました。

 

漫画動画について

 

―― Domixの公演では、樹崎さんがモーションコミックを製作されているそうですね。製作には、どれくらい時間がかかるのでしょうか。

 

樹崎 話にもよりますが、公演用に製作するものを全部合わせると、1~2か月位ですかね。そこから稽古で合わせる中で調整も入りますが、その前に一通り作る分で、大体2か月位です。

 

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予告動画より、第二話『幸運の首』の冒頭部分。Domix史上初、フルカラーでの上演が予定されています。

 

―― 漫画動画を作る上で、特にこだわっている点は何でしょう。

 

樹崎 物語を見せる時の基本ですが、まず「驚かせる」こと。どんなシーンにおいても、驚いてもらうことを大事にしています。人の心は、驚いたところからしか動かせないので。笑うにしても、泣くにしても、感動するにしても。人の心は、驚いたところから発進して、動き出すのです。そのために、音を一瞬早く入れるようにしています。Domixの場合、「ドーン!!」とか、音を表す文字は動画に入っているのですが、その文字が見えるより早く「ドーン!!」という音が鳴る。ほんの一瞬、気が付かれないレベルで。実際に物を見る時は逆ですよね。見た物の方が先に届く。ですが、映像上は絵よりも音を先に届けないと、気持ちのいいリズムが産まれないので、そこはいつも意識して作っています。

 

佐白 やはり、観客に「読ませない」ことが大切ですね。効果音だけでなく、役者の台詞にも同じことが言えます。吹き出しよりちょっと早くその台詞を読み上げる、演じ上げることをやらないといけません。お客さんがコマを見て、台詞を黙読しているのを追いかける形で役者の声が入ってくると、ストレスになってしまいますので。文字を読んでいる頃には、もう台詞が聞こえている、という速さでやることが大事です。

 

樹崎 考えさせる間をお客さんに与えてはいけない、というのはDomix初期の頃から心がけています。

 

―― 通常の芝居でもテンポ感は重要視されますが、動画に合わせなくてはならない分、Domixさんではより正確さが求められますね。

 

佐白 スピードが速いですからね。モーションコミックは。

 

樹崎 始めた頃は、色んな人に「速すぎる」と言われてきましたが、全然僕は気にしませんでした。むしろ、それで話題になればいいと思っていましたし。今のyoutuberとか、すごい台詞の間をカットしているでしょう。ああいう感じを僕もやりたかったので。考えさせる間を一切与えないことで、面白さを増して、情報量を増やす。モーションコミックで見せる以上は、そんなに描き込んだ絵を見せられる訳でもないから、テンポで見せないと敵わないと思いましたし、そこから新しい面白さを見せられるのではないかと。

 

嶋垣 一回Domixさんの舞台を経験しましたが、役者のやりたい間で出来ないということは、難しくもあるけれど、他の現場にはないやりがいだなと感じました。樹崎さんが計算されたテンポ感が、結果としてお客さんが見た時に一番気持ちいい流れに近いということを考えれば、そこに役者が合わせていくのが、この現場においては一番いい。役者それぞれが独りよがりな芝居をせず、同じ方向に向かって頑張ることで、芝居全体もまとまりやすくなるのではないでしょうか。

 

樹崎 観る人全員が、そんなに速いペースを求めている訳ではないこともわかってはいるのですが、全員に「面白い」と思ってもらえる物は絶対に作れませんので。はっきりしたスタイルがあった方がいい、という考え方をしています。

 

演出について

 

―― Domixさんは企画団体なので、その時によって演出が朗読形式であったり、舞台全体を使った動きを取り入れたりと様々ですが、今回はどういったスタイルを構想されているのですか?

 

佐白 舞台上で「演劇」として展開し、それと動画をリンクさせていく予定です。僕がDomixで演出をやらせていただく時は、いつもその方法でやっているので、今回もその形でいきたいなとは思っていたのですが…やはり稽古をしてみて、10話全部を動かそうとすると大変だなと感じました。ちょうどコロナの影響で、動きやミザンス(舞台上における、役者の立ち位置)をつける作業に入る直前で稽古が中断してしまったので、具体的なプランはまだ構想中ですが、僕がDomixに初めて出演させてもらった時は、朗読をベースにした公演でしたし、演劇と朗読、それぞれに良さがあると思っています。朗読は朗読で面白いしかけが作れますから、今回の『アウターゾーン』では、普通の演劇として展開する部分と、朗読形式にシフトする部分が上手くミックス出来たらいいなと考えています。

 

―― 『Domix』という企画名も、「混ぜ合わせる」を意味していますし、良い試みかもしれませんね。10話ある中で1話ずつを、演劇か朗読に振り分けるということでしょうか?

 

佐白 作品ごと、というよりはシーンごとですね。この瞬間は絵でパッと見せたいところを、止めて見せるとか。お客さんの中で、ずっと動いて見えていたものが止まることで、気持ちが切り替わって、見え方や興味の引かれ方が変わると思います。見せたいシーンとか、敢えて流してほしいシーンとか、それぞれに合わせて、動きのつけ方を変えたいという構想は稽古の段階からありました。まだ実践できていないので、今の段階では具体的に語れませんが。

 

―― 今回、上演予定のお話の中にも、再現が難しいアクションや変身するシーンなどがありますよね。どのように演出されるのかが楽しみです。

 

佐白 逆に、漫画のコマがスクリーンに映されているので、そういうところは絵の力に頼れるかなと思います。

 

―― 芝居を見せることと、漫画を見せることを両立する、Domixさんだからこそ出来ることですね。

 

稽古について

 

夏陽 コロナの影響で稽古が中断してしまい、動画との合わせはまだこれからですが、どんな稽古になるのでしょうか。私、そういう演技をすることが役者人生で初めてなので。

 

佐白 どういう稽古をするかと言うと、本当にシンプルで、実際に稽古場で動画を流して、役者がそれを見ながら合わせていきます。本番も、舞台上から動画が見えるようにはしているのですが、客席の奥にあるので、画面の切り替わりくらいしか見えません。出来るだけ稽古場でも、最終的にはモニターを遠くして、見えにくい状態で合わせるようにしています。特に、動画合わせを経験したことがない役者は苦戦しますね。それまでの稽古で作ってきた演技プランが、動画に合わせようとすると絶対に一回崩れます。だからもう崩してしまって、そこから修正して、再パッケージしていくイメージです。

 

夏陽 動画と役者の芝居がしっかりはまれば、本当に漫画から飛び出てきたような、演じている方も、観ている方も気持ちいいお芝居になりますかね。

 

佐白 まさにそうです。僕はそれを、稽古で「光る瞬間」と呼んでいるのですが、その「光る瞬間」を何回作れるのかが、毎回勝負です。

 

―― この『アウターゾーン』の舞台化が発表された時、多くの方からDomixさんの「2.2次元」というスタイルについて疑問が上がっていましたね。少しでもイメージが伝わるといいのですが。

 

佐白 「漫画から飛び出てくるような感覚」というものは、2.5次元の舞台よりも2次元的と言うか、原作に近い味わい、という意味で2.2次元なのかなと僕は解釈しています。

 

樹崎 元々は、お客さんから自然発生した表現ですけどね。僕らが言っていた訳ではなくて。確かに2.5次元よりも2次元寄りだなと思って使っていたら、だんだん定着していきました。

 

―― 役者とキャラクターが融合するといった表現が2.5次元ですが、それとはまた違った表現ですよね。漫画動画と役者が融合した「光る瞬間」に期待が高まります。

 

佐白 これは自分が役者としてDomixに出演する際にも、毎回心がけていますね。漫画のコマが切り替わっていく中で、時間軸が飛ぶ場面とか、瞬間移動しなければ成り立たない場面は、演劇として「静と動」の「動」で展開することで、「こういう動きがあって、このコマに至りました」というのを見せることが出来ます。そして「静」はコマと同じ画角で、ぴたっと止めて見せる。この「静と動」のバランスが、毎回Domixの面白いところでもあり、役者が稽古する中で、最後まで悩む部分ではないでしょうか。

 

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嶋垣 役に没頭しすぎると、漫画との整合性が取れなくなりますね。演じている最中も、どこかで自分を客観視する余裕が無いと、漫画と上手くかみ合いませんし、その上でも役者同士のチームワークが大切になると思います。一人一人が周りとコミュニケーションを取りながら、一つの絵や、動画の流れに合わせていく意識が必要になると思います。

 

佐白 そうかもしれませんね、本当に。最後は役者と動画のやり取りになるので、演出家が手出しできないところですし、そういう意味でも、コミュニケーション力や、総合理解力が鍵を握るのかもしれません。

 

嶋垣 一回出演してみて、誰かが崩れた時にどうフォローし合うかがすごく重要だなと感じました。

 

佐白 尺がはずれた後、どうリカバリーしていくかは毎回鬼門ですね。今回は話数が多く、それぞれにメインの役どころが与えられていることを考えると、一人一人にかかるウエイトも大きいと思います。

 

樹崎 主役の人が多いわけだよね。

 

嶋垣 それぞれのお話で取り上げられている人達が、そのお話の中での主人公ですよね。短いお話の中で、どれだけ内容に説得力を持たせられるか。すごいボリュームで大変ではありますが、上手くいけば、あっという間に終わってしまうような公演になると思います。

 

夏陽 お客さんを飽きさせず、最後まで集中して楽しんでもらうために、みんなで力を合わせて頑張りたいですね。

 

今後について

 

―― 現在準備中のクラウドファンディングについて、お聞かせいただけますか?

 

樹崎 実施する時期は、公演をいつやるかに合わせて検討中ですが、内容は大方決まっていて、集英社にも話は通してある状態です。光原先生の協力もあって、予定では25枚の色紙を描いてくれることになっています。カラーにしてくれとは頼んでいなかったのに、色まで塗ってくれました。

 

佐白 いや、すごいことですよ、これは。

 

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今回のクラウドファンディングのリターンとして用意されている、光原先生直筆の色紙。数に限りがあるようなので、お見逃しのないようご注意ください。

 

樹崎 延期になったことで、損害は他の劇団同様に出ているので、それをちゃんと取り返して、舞台『アウターゾーン』を興行として成功させたいです。いつやれるかわからない状況でしたが、座席を50パーセント以下に減らすという規制も解除されましたし、ようやく本気で進められそうです。

 

―― やはり、席数を減らして上演するよりも、入れる限りお客さんを入れて、出来るだけ多くの方に観てもらいたいですよね。

 

樹崎 少ないお客さんに観てもらうのでは、今まで何のために僕らはやってきたのだという話ですからね。『アウターゾーン』という作品にも申し訳ないですし。

 

佐白 座席を減らすくらいだったら、無理して今やらなくてもいいのかなと。

 

樹崎 何か、他の公演を間に挟んでもいいのかなとも考えています。

 

佐白 『アウターゾーン』のために規模を拡大し、見合う規模でやろうと準備してきたのは僕もお伺いしています。ですから、この公演で規模を縮小するくらいなら、違う作品で座席を減らしてやってみて、この情勢で舞台が打てるのか、ということを確認してもいいのかなと思います。僕も嫌ですね、『アウターゾーン』で座席を減らすくらいなら、今は待って、時期が来た時にちゃんと打ちたいです。

 

―― せっかく、多くの人に観てもらえるチャンスですからね。

 

樹崎 これで上手くいけば、色んな有名作品をDomixで手掛けることが可能になるかもしれないですし、色んな意味でチャンスですよね。

 

―― 2.5次元とはまた違った新しい表現方法ですから、観る側にとってもきっと新鮮なものになりますよね。

 

嶋垣 「原作のイメージを崩されたくない」という方にこそ、漫画の良さをそのまま舞台に持ってくる、Domixのお芝居を是非体験してもらいたいです。

 

樹崎 原作の漫画が、そのままスクリーンに映されますからね。

 

佐白 どうしても役者を見たくないという方には、スクリーンだけを観るという選択肢もありますね、Domixの場合。そこは強みではないでしょうか。

 

―― それでは最後に改めて、舞台『アウターゾーン』に向けての意気込みをお願いします。

 

佐白 自粛期間中、この舞台が「中止」ではなく「延期」になったということは頭にありましたので、空いた期間に一個でも新しいアイディアが出せたらと思い、『アウターゾーン』を読み返し、色々な舞台の映像を観させていただき、新しいアイディアを見つけてきました。この期間待っていただけではなく、準備をしていたのだということを、稽古を再開した時に「だてに期間が空いていた訳ではない」という形で発揮していきたいです。とても良い準備期間がもらえたという意味では、全然悪い自粛期間ではなかったと僕は思います。

 

夏陽 私も、『アウターゾーン』が中止ではなく延期だと聞いた時、皆さんに期待してもらっていた分、すごく残念ではありましたが、啓さんが言うように「準備する期間がこんなにも出来た」と考えたら、自分もお芝居だったり、身体の調整だったりを頑張ろうと思いました。せっかくこうしてミザリィを演じる機会に恵まれたのですから、それに向けて「延期して良かった、待っていて良かった」と、観た時に言ってもらえるような準備期間にしたいです。あと、髪の毛も伸ばせますし(笑)ウィッグで演じる予定でしたが、こうなってしまえば、伸ばして地毛で出来るじゃないかと希望を持って、全身まんべんなくミザリィで本番を迎えたいです。

 

嶋垣 見た目を作り込むのも、この期間のうちに頑張りたいですよね。

 

夏陽 本当に。ジムも行きますよ、そりゃあ(笑)

 

嶋垣 あとは個人的に、「延期」というのは希望でもありました。学生時代に、3.11によって公演が中止になった経験をしていますので。延期の知らせを受けた時は、ショックを受けるより、ほっとした気持ちの方が強かったです。まだ公演を打てるという希望は残されていますし、延期になったからこそ出来ることもあります。一回距離を置くことで、自分の演技や役を客観的に見つめ直せますしね。稽古に集中し過ぎると、考えが凝り固まってしまうこともあるので、逆に色々な可能性を探れるチャンスだと捉えたいです。

 

佐白 結局、日常生活の中のちょっとしたことをきっかけに、「あ、これって使えるな」という発見があって、そこからお芝居が変わっていくことはよくありますし、稽古期間中にもそうしたきっかけで変わる人は沢山います。きっかけに出会うための時間を沢山もらえたと思いますし、全員揃うかはわかりませんが、稽古を再開して座組が揃った時に、みんな自分の中で何かを見つけて、バージョンアップして来てほしいです。あとは台詞さえ覚えていてくれれば、大丈夫なのではないでしょうか(笑)

 

―― インタビューにご協力いただき、ありがとうございました!

 

Domix11舞台『アウターゾーン』の公演予定や、クラウドファンディングなどの最新情報は、公式ツイッター(https://twitter.com/Domix13880815)にてご確認ください。

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